大腸憩室症(憩室炎・憩室出血)

大腸憩室症の原因は
食事や生活習慣の可能性も

大腸憩室症の原因は食事や生活習慣の可能性も憩室(けいしつ)は、大腸の腸管壁の一部が外側に袋状に突出している状態です。慢性的な便秘などによる腸管内圧の上昇が原因とされており、圧に耐えられなくなった腸管壁の壁が薄い部分が外側に膨らみます。食物繊維の少ない食事、または赤身肉を多く摂る食事習慣、運動不足、肥満、喫煙、NSAIDs(非ステロイド系抗炎症薬)、遺伝などとの関連があるとされています。一度できた憩室は元に戻ることはなく、加齢とともに増加します。

大腸憩室症は
ほとんどが無症状

ほとんどの場合は無症状で、大腸カメラ検査や腹部CT検査でたまたま発見されるというケースが多いです。
S状結腸に憩室が数多くできる場合は、憩室によって腸管が少し狭くなることもあります。腸管に狭いところができると、腹痛や便通異常や腹部の張り感などの症状が現れることがあります。
憩室自体は合併症がなければ、治療が必要なものではありません。
注意しなければならないのは憩室による合併症で、憩室炎と憩室出血の2つが挙げられます。

憩室炎になると腹痛や発熱などの症状が生じることも

「憩室炎」とは、憩室に糞便が溜まり続けることで内部に細菌が繁殖し、憩室に炎症が起こる状態です。
発熱や腹痛、下痢などの症状が現れます。炎症の程度によっては、腸管穿孔(ちょうかんせんこう:腸管に孔があく疾患)や膿瘍が生じる危険性もあるため、憩室炎を疑った場合には血液検査や腹部CT検査を行い、炎症の状態を評価します。

憩室出血になると
血便が出ることも

「憩室出血」とは、憩室内の血管が破綻することで出血を起こしてしまう状態です。肥満やNSAIDsの服用がリスクとして挙げられます。腹痛や発熱は起こりませんが、突然の血便で発見されることが多いです。大量の出血をきたすこともあり、その場合は大腸カメラ検査を行い、出血している憩室を同定して止血処置を行う必要があります。

大腸憩室症の検査

大腸憩室症の検査大腸カメラ検査や腹部CT検査で確認することができます。
重度の腹痛が起こっている場合、炎症がひどい場合は大腸カメラ検査ではなく、腹部CT検査を行います。憩室炎と診断された場合はまずは抗菌薬投与を行い、炎症が落ち着いてから大腸カメラ検査を受けていただきます。
血便がみられる場合は、大腸カメラ検査を行って出血部位を確認します。
ただし大量の出血がみられる時は、大腸カメラ検査の前に造影剤を使用した腹部CT検査を行って、出血部位を確認することがあります。重度の憩室炎や憩室出血が疑われる場合は、速やかに連携病院をご紹介します。

大腸憩室症の治療

大腸憩室症の治療無症状でしたら、特に治療は必要ありません。炎症までは起こしていないが、便秘や腹痛、腹部の不快感などがみられる場合は、食事療法や内服薬で治療を行います。
憩室炎でしたら、抗菌薬の投与を行い、細菌の増殖を抑える必要があります。また、絶食による腸管安静も有効です。絶食を行う場合は、水分や栄養が不足する可能性があるため、入院し点滴療法を行うこともあります。

治療を続けて症状が緩和された後は、大腸がんなどの疾患が隠れていないか調べるため、大腸カメラ検査を受けていただきます。
膿瘍ができている場合は、抗菌薬投与に加えて、膿瘍ドレナージ(膿を身体の外へ排出させること)や膿瘍周囲の大腸を切除する手術が行われることもあります。
憩室出血の治療ですが、まず止血を行うことが必須です。「内視鏡による止血(内視鏡的止血術)」が第一選択ですが、内視鏡で止血が困難な場合はカテーテルによる「動脈塞栓術」が選択されます。憩室出血の70~90%は自然に止血するとされており、軽度の出血でしたら絶食による腸管安静が行われます。ただし何度も出血が起こっている時は、大腸切除を検討します。

憩室炎も憩室出血も、再発リスクの高い疾患です。そのため過去に発症したことのある方は、治療後でも気を付けなければなりません。
腹痛や血便などの症状が現れた際には、放置せずに医療機関を受診してください。

大腸憩室症になった場合の
食事

炎症が起こっている急性期は、腸への負担が少ない食事メニューにしましょう。
消化の良い食品としては、白米やうどん、白パン、麺類、ヨーグルト、チーズ、豆腐、白身魚、牛乳などが挙げられます。「白い食べ物」で覚えておくとよいでしょう。
またコーヒーやチョコレートなどには、腸を動かす作用があるため、急性期に摂ると症状が悪化します。
炎症が落ち着き、腹痛がなくなった後の食事内容ですが、食物繊維が多く含まれている食品をこまめに摂ることをお勧めします。

食物繊維には、便のかさが増すことで大腸を刺激し、蠕動運動を活発化させる働きがあります。
この運動が活発になると、便やガスが腸の中に溜まりにくくなるため、便秘を防ぐこともできます。
便やガスが速やかに排出されやすくなるため、腸の中の圧力も下がります。そのため、大腸憩室症の予防にもつながるのです。
食物繊維が多く含まれている食品としては、ダイコンやゴボウといった根菜類、エノキ・マイタケ・シイタケなどのキノコ類、ワカメ・ヒジキなどの海藻類、大豆製品などが挙げられます。

expand_less
tel:0666550330 WEB予約